腕時計は私たち人にとって最も身近な「機械」のひとつです。
「時間」という、人が生きるうえで欠かすことのできない大切な情報を伝えるために、
今この瞬間も、世界中で様々な人の、様々な腕時計が、同じ速さで時を刻んでいます。
セイコーは「時を伝える」という、時計本来の機能を追求するために、今日まで独自の技術を真摯に磨きつづけてきました。
その中で我々は、「時を伝える」という本来の機能の先に「美しさ」「面白さ」などの新しい魅力が多く宿っていることを知りました。
本展「からくりの森」は、そのような「機能の先に宿った時計の魅力」に焦点を当てた企画展です。
第2回目の開催となる「からくりの森 2023」では、
セイコーの技術の中でも長い歴史を持つ「機械式腕時計」を題材として、
3組の外部クリエイター nomena、siro、TANGENT、そしてセイコーウオッチ デザイン部が、本展のために作品を制作。
展覧会ディレクター・平瀬謙太朗がそれらの作品を「Seiko Seed」という空間に構成しました。
現代に至るまで、脈々と進化を続けてきた「からくり」技術の先に宿った多様な魅力を、
是非、実感していただきたいと思います。
2023年10月13日(金)〜12月24日(日)11:00-20:00
※入場は19:45まで/会期中無休
Seiko Seed
東京都渋谷区神宮前1-14-30 WITH HARAJUKU 1F
JR山手線 「原宿」駅(東口)
東京メトロ千代田線・副都心線 「明治神宮前〈原宿〉」駅
無料
セイコーウオッチ株式会社
nomena、siro、TANGENT、セイコーウオッチ株式会社 デザイン部
セイコーウオッチ株式会社 時計設計部
平瀬謙太朗 (CANOPUS)
桐山登士樹 (TRUNK)
※時計の販売は行っておりません。
Movie by Daisuke Ohki
2012年設立。以来、日々の研究や実験、クリエイターやクライアントとのコラボレーションを通して得られる多領域の知⾒を動⼒にして、前例のないものづくりに取り組み続けている。近年では、宇宙航空研究開発機構JAXAなど研究機関との共同研究や、東京2020オリンピックにおける聖⽕台の機構設計などに参画。主な受賞歴に、⽂化庁メディア芸術祭アート部⾨優秀賞(2022)、Penクリエイターアワード(2021)、DSA⽇本空間デザイン賞⾦賞(2017)、⽇本サインデザイン協会SDA賞優秀賞(2017)、東京都現代美術館ブルームバーグ・パヴィリオン・プロジェクト公募展グランプリ(2012)他。
https://nomena.co.jp/siroは、ものづくりの会社です。我々が考える「ものづくり」とは、コンセプトや企画から始まり、デザインやエンジニアリングなど様々なスキルを集結し、絶妙なチームワークで最高に素晴らしいものを作ることだと思っています。
siroでは、様々な社外の才能と親密な連携により仕事をしています。今回の「からくりの森」の制作チームも、siroの社外のメンバーも多くコミットしています。デザイナーやエンジニアなどのスキルで構成されているチームですが、それぞれ作品を作る活動もしているメンバーでチームを作りました。それぞれのスキルやアイデアを集め、高め合いながらいい作品につなげていきます。
2015年にロンドンで設立。デザインとエンジニアリングの発展的な融合を得意とし、世界的なラグジュアリーブランドに多くのデザインやコンセプトを提供するほか、テクノロジー起点の新規事業開発から街づくりまで、幅広い領域のプロジェクトに携わる。近年では、日本の伝統工芸と先端技術を繋ぐ国際的なイニシアティブ「Craft x Tech」を創立し、日本文化の進化・継承にも取り組んでいる。
www.tngnt.uk1881年の創業以来、セイコーは創業者の信条「常に時代の一歩先を行く」とともに、精度と美しさへの飽くことない探究により、日本初の腕時計や、世界初のクオーツ式腕時計など、数々の革新的な腕時計を人々の手に送り届けてきました。
現在、世界でも数少ないマニュファクチュールとして、先進技術と匠の技を組み合わせ、日本の美意識に基づく腕時計により、お客様の感性に響く「喜びと感動」を提供し続けています。
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1986年、サンフランシスコ生まれ。慶応義塾大学SFC 脇田玲研究室 卒業。東京藝術大学大学院映像研究科 佐藤雅彦研究室 修了。2013年、デザインスタジオ「CANOPUS」設立。2020年、映画・映像の企画事務所「5月」設立。
メディアデザインを活動の軸として、映像・映画・デジタルコンテンツ・グラフィック・プロダクトなど、様々なメディアにおける新しい表現を模索している。
不思議なことが起こった。
近年、「機械」と呼ばれるもののほとんどは電気の力で動いている。
私たちは、電気の力に疑いを持たず、そればかりか、まるで電動であることが、
正確・精緻であることを保証しているかのようにすら感じている。
だからこそ、私たちは「機械式腕時計」という存在に感動してしまう。
眼の前で狂いなく正しく時を刻み続けるこの小さな機械が、電気ではなく、人が手で巻いたぜんまいの力によって動いているという事実。
そして、それを実現している恐ろしく精巧な機構と、その美しさに心を奪われる。
本展は、その抗いがたき感動を受け取った4組のクリエイターが、
「機械式腕時計」の魅力を独自の視点から解釈し、各々の表現によって再構成する展覧会として始動した。
しかし、そんな最中、不思議なことが起こった。
それぞれの作品の制作が始まってみると、まるで示し合わせたかのように、すべてのクリエイターからある共通のキーワードが出てくるようになったのである。
Animacy = 生命感
たとえそれが無生物であっても、まるで生きているかのような有機的な振る舞いに、私たち人間が「生命感」を感じてしまう認知現象は、決して珍しいことではない。
しかし、この「機械式腕時計」の振る舞いは、むしろ、その逆である。
正確無比に、淡々と、規則正しく針を動かし続ける単調な機械。それが「時計」である。
では一体、彼らは「機械式腕時計」の何処に、「Animacy(生命感)」を見出したのか。
結果として、本展は「機械式腕時計」というモチーフを通じて、時計に宿る「Animacy(生命感)」の正体を、4つの視点から垣間見ようとする展覧会として再構築されることとなった。
また、言うまでもなく、ぜんまいを巻く限りいつまでも動き続ける「機械式腕時計」は、持続性の低いエネルギーに多くを託して生きている私たちにとっては「永続性」の象徴とも読み解ける。
その小さく、しかし力強い針の動きをじっと見ていると、
700年以上の歴史をもつこの機械の中に、私たちが歩むこれからの未来への手がかりが隠れているのではないかと、どうしても期待してしまう。
展覧会ディレクター
平瀬謙太朗